【試し読み】真夜中。待って、好き。

真夜中。待って、好き。

#大学生 #睡眠姦 #ラブコメ #執着

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 人生最大のピンチかもしれない―――。

 高槻(たかつき)ミナトは、目の前で、『さも当然』という顔をしている槇颯(まきそう)太(た)を見ながら、冷や汗が止まらなかった。
 ほんの数秒前。
 颯太は、告げたのだった。
 今日、飲みに行くぞ、くらいの軽い口振りで。
 朝食を食べ、身支度を調えて、一緒に大学に行こうという、その、まさに寸前に。

「あのさ。今日、帰ったら、お前のこと、抱くから。もし、抱かれたくないなら、三日くらいネカフェにでも泊まってて。家に居たら、抱く」

 抱く。
 ……抱くって、それは、『抱きしめる』ではない……よな。
 つまり、セックス、ということだよな?
 ……それで、抱くっていうなら、颯太が、ミナトを抱く、ということだよな。
 ミナトは、ぐるぐると回る思考の中で、なんとか、それだけは考えた。
「……な、なんで……いきなり……?」
 そう。いきなりだった。
 今まで、ルームメイトとして、部屋をシェアして二年ほど過ごしてきたが、まったく、そういう雰囲気はなかった。
 つまり、颯太が、性的な接触を匂わせてきたり、友情以上の好意を見せてきたこともなかったはずだ。
「あのさ、ミナトは本当に何も気付いてないわけ?」
 颯太は、呆れたように言う。
「な、何だよ、それ……」
 気付いていないと言われても、何も解らない。颯太は、大学で人気者だった。陰キャのミナトとしては、いっしょに居るのが申し訳なくなってくるような気分になっていることが多いほどで……『気付いていない』というからには、何らかの、気持ちの表明的なものがあったのだろうが……。
(そんなの、知らないよ……っ)
 慌てていると、颯太は「本当に、気付いてなかったのか」と小さく呟いてから、「あのさ」とため息交じりに話し始めた。
「最近、朝起きて身体がダルかったり、なんか、熱っぽかったりとかしてなかった?」
「えっ? う、うん……してたけど」
「あとは……たまにさ、乳首とか、擦れたりするとき、何か、気持ち良い感じがしてきたとか」
「っ!!!!」
 答えるのに戸惑ったが、確かに、あった。
(なんで、颯太が知ってるんだよ……)
 最近、ぐっすり寝たつもりなのに、朝起きると妙に気だるい感じがしていたり、身体のあちこちが、ぎしぎし鈍く痛むような感じがあった。そして、今、颯太が言ったように、乳首とか、首筋とか、あちこち、ビンカンになっているような気がしていた。
「ふつう、そう言うときって……なんかえっちな夢とかみちゃったりするんだけど……、最近、妙に、えっちな夢とか見たりしない?」
 ドキッとした。
 たしかに、最近『欲求不満かもしれない』と思うくらいには、えっちな夢を見るのだ……。
「……な、なんで……」
 知ってるんだよ、と聞こうとしたのを、颯太が遮る。
「なんでって……そりゃ、俺が仕込んだんだから当然じゃね?」
 颯太は、さらり、と言った。
「し、仕込む……?」
 丁度、リビングの壁掛け時計が、十時の鐘を鳴らす。学校に行かなければならない時間だった。ここから、学校までは、歩いて二十分。授業の開始が、十時半だった。
「……まあ、さ、解らなければ……恋(れん)あたりに聞いてよ。アイツの方が解ってると思うから」
「えっ……」
 くるりと、颯太はミナトに背を向けて、玄関へと歩き出す。
「ちょっ、ちょっ……と……っ!」
「とりあえず、二限必修だろ。俺もお前も。行かないとヤバいよ」
 それはそうだったが、今の話も十分、ミナトには『ヤバイ』ものだった。



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